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映画「Ryuichi Sakamoto: CODA」の感想。音楽家・坂本龍一の内面に鋭くせまった渾身のドキュメンタリー!

日本が世界に誇るミュージシャンの1人である巨匠・坂本龍一。
彼の仕事に密着したドキュメンタリー映画「Ryuichi Sakamoto: CODA」を観ました!

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(出典:Ryuichi Sakamoto: CODA』公式サイト)

坂本龍一の音楽に対する価値観の変化が興味深い

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(出典:Ryuichi Sakamoto: CODA』公式サイト)

坂本龍一といえば、1970年台〜80年台にかけて世界を席巻したテクノバンド「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」としての活動が非常に有名ですね。
「ライディーン」「テクノポリス」といった代表曲は、音楽ファンでなくても一度は耳にしたことがあるでしょう。
劇中には80年台当時の坂本の映像も登場するんですけど、コンピューターによる音楽制作手法を鋭い口調で語っていて、なかなかとんがってんな〜って印象です。

うって変わって、21世紀の坂本の関心は"自然な音"の追求へと移っています。
木々の葉が擦れ合う音や、降り注ぐ雨音といった、人工的でない音から音楽を紡ぎ出すことに情熱をそそぎ、音をサンプリングするために北極圏まで出向いてしまうほど。
そこで採取した、雪解け水が流れる音を聞いて「今まで聞いた中で一番純粋な音です」と語る坂本の表情には、心からの喜びが見て取れます。

最近の坂本龍一は、原発再稼働への反対運動に身を投じるなど政治的メッセージが多く、それを快く思わない音楽ファンも少なくありません。
ですが、(おそらく)湾岸戦争以降の不安定な世界情勢、いまだに解決を見ない核兵器問題、さらにアメリカ同時多発テロをニューヨークで目撃した体験などが、彼の中で「世界が平和でなければ、音楽はできない。音楽家こそが世界平和のために行動しなければならない」との想いを年々大きくしているのでしょう。
だから戦争にはもちろん反対、核エネルギーにも反対。
そして、産業革命を経て大きくダメージを受けてしまった地球環境を守らなければならない……
という理屈なんですね。

こうした彼の内面の変化は、映画の中でしっかりと語られています。
東日本大震災の被災地域で出会った「津波ピアノ」とのエピソードは、現在の彼の価値観を非常に興味深く示しています。
ぜひ劇場で、彼の言葉に耳を傾けてみていただきたい。

YMO時代のライブや「戦メリ」が劇場で聴けて感動!

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(出典:Ryuichi Sakamoto: CODA』公式サイト)

坂本龍一の音楽のいちファンとしては、映画館の大画面&大音響で彼の音楽を聴けてただただ感動でした!
YMO時代のロサンゼルス公演で演奏された「Tong Poo」や、ピアノ、ヴァイオリン、チェロで奏でられる「戦場のメリークリスマス」。
さらには、彼が映画音楽を手がけた「ラストエンペラー」「シェルタリング・スカイ」といった名画たちも劇中で引用されています。
特に「ラストエンペラー」の、革命によって愛新覚羅溥儀が紫禁城を追い出される場面には思わず身体が震えましたね……!

ただし強調しておきたいのは、映画音楽とは監督の注文によって作られるものだということ。
坂本自身が劇中でも語っているとおり、芸術家に一種の制約を課す仕事なのです。
それは、逆に作家の可能性を広げてくれる可能性もあるけれども、本質的に作家性を最大限発揮できる仕事ではない。
やはり坂本龍一という音楽家がほんとうに表現したいものを理解するには、彼のオリジナルアルバムを聞くべきなのです。

坂本のオリジナル楽曲は、かなり現代音楽に寄ってるんですよね。
「CODA」の中でも、シンバルをヴァイオリンの弓で擦って「キイィイィィイイイイイイン」と不快な音をあえて出してみたり、ピアノ曲の後ろに"原爆の父"・オッペンハイマー博士のインタビュー音声を重ねてみたりと、まぁいろんなことをやってます……
最初はグロテスクに聞こえるかもしれませんが、せっかく「CODA」を観たなら最新の彼の作品にも触れてみると、映画のメッセージがより強く感じられるはずです。

映画の中で制作過程が撮影されていた最新アルバム「async」は、Amazon Music Unlimitedの聴き放題対象になっています。*1
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劇中に登場した映画たち

「戦場のメリークリスマス」

太平洋戦争中のジャワ島を舞台に、日本兵とイギリス兵捕虜に芽生える奇妙な友情を描いた、大島渚監督の代表作。
坂本龍一は映画音楽を手がけたほか、ヨノイ大尉役として俳優にも挑戦しています。
はっきり言って演技はうまいとは言えませんが、その中性的な顔立ちと凛とした雰囲気には彼にしか出せない味がありますね。
また、ハラ軍曹役で出演したビートたけしの演技は見事というほかありません。
ラストシーンでたけしが見せる笑顔には世界中が涙しました!

メリー・クリスマス! メリー・クリスマス! ミスター・ローレンス!!

「ラストエンペラー」

中国・清朝最後の皇帝、愛新覚羅溥儀を主人公にした、ベルナルド・ベルトリッチ監督による一大歴史絵巻。
当時では異例となる、紫禁城を貸し切っての撮影により実現した壮大なスケールの画面の数々には、今見ても圧倒されてしまいます。
坂本龍一は、満洲映画協会会長・甘粕正彦役として出演。
当初は俳優としてのみの仕事だったはずが、急遽「音楽も作ってくれ」と依頼され、なんと1週間で40曲以上を書き上げて録音してしまったとか……
「CODA」の中でも坂本はこのエピソードに触れ、「若かったからなんとかできた。今じゃ体が持たない」と語っています。

いやはや、さすが天才ですわ

*1:2018年8月現在