自分はこんなちっちゃな町におさまる器じゃないんだ!
自分は誰とも違う特別な能力があるんだ!
自分は、自分は、自分は……
そんなことばかり考えていた思春期の思い出、あなたにもありませんか?
2018年のアカデミー賞5部門ノミネートと、今たいへん注目されている映画「レディ・バード」は、軽妙なユーモアとともにあなたの「イタタ」な青春時代を容赦なくえぐってくる快作です!
10点満点中7点
予告編はこちら(英語版)
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以下、映画の見どころや感想を書いています。具体的なネタバレはありませんが、前情報を知りたくない方はご注意ください!
青春とはイタさだ! 思春期の感情をリアルに思い出させてくれる映画
「あんた、自分が一番目立たないと何もできないじゃない!」
このセリフ、予告編の中でレディ・バードの親友が彼女に浴びせかける言葉です。
その通り、映画の主人公レディ・バードはかなりの目立ちたがり屋で自意識過剰、
言い方を変えれば「イタい」。
そもそも本名とは別に「レディ・バード」って名前を名乗っている時点でイタい。
学校の成績だったり、友達関係だったり、
いろんなことを少しでも優秀そうに、少しでもカッコよさげに見せようとすることに一生懸命。
演劇サークルに入部しても、主役のオーディションに落ちるとやる気をなくしてどっかに行っちゃう。
こんな「イタさ」を真っ正面から描いてるからこそ、
「レディ・バード」は、あなたの青春時代をリアルに思い出させてくれます。
青春時代のあの独特の雰囲気って「イタさ」つまり過剰な自意識によるものだと思うんですよ。
劇中、レディ・バードが母親から「あなたはいつも自分のことしか考えてない」と言われるシーンがありますけど、
進学先も就職先も未定な10代の若者って、それだけでワクワクするコンテンツですよ。
そりゃ自分のことが一番おもしろいに決まってるでしょ?
そんなわけでですね、レディ・バードに限らず、出てくるクラスメイトのほとんどがどこか「イタい」んです。
誰かのことを考えているようでも、どこかで自意識が顔を出して、知らないうちに他人を傷つけてしまう……。
あんまりにも描写がリアルというか"ありそう"なので、
「うわぁ〜 こういうことあったわ〜 思い出したくねぇ〜!」
と頭をかきむしりたくなるような過去をしっかりえぐり出してくれることでしょう!
キリスト教の国・アメリカだからこそ大きな感動を呼んだ映画?
「レディ・バード」は、アメリカの映画批評まとめサイト Rotten Tomatoes でコメント235件、満足度99%という驚異的な高評価を獲得しています。
だからこそ、楽しみにしている日本の映画ファンも多いと思うんですよね。
ただしこの映画が、かなりキリスト教びいき、そしてアメリカびいきであることは頭に入れておいて良いと思います。
主人公の本名がクリスティーンであったり、
映画のポスターにはレディ・バードを見守るように十字架が映っていたりと、
すでに公開されている情報からもキリスト教が深く関係している映画だってことが推測できます。
アメリカびいきという点に関して言うと、
彼氏の家の正面にアメリカ国旗が飾られている、
2001年のアメリカ同時多発テロとその影響について劇中で何度も触れられるなど、
国家を意識させるモチーフがいろいろと出てきます。
もちろん、キリスト教とアメリカは切っても切れない深い関係にありますしね。
で、話の筋書きそのものも
「聖書の教えにしたがって生きよう!」
的なメッセージにあふれているんで、
アメリカの皆さんはよけいに感動するところが多かったのかな〜。
普段より多めに点がついちゃったのかな〜。
……なんて感じちゃいました。
でもね! 国や宗教に関係なく、たくさんの人が感動する映画なのは間違いありません。
脚本そのものがちゃんとおもしろい。
軽妙なユーモアに笑えて、思春期ならではの自意識過剰さに胸をえぐられ、
家族や故郷の大切さに気づかされ、ほろりと泣ける青春ムービー。
2018年6月の日本公開を期待して待ってくださいー!!
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