圧倒的なバイオレンス描写とドキュメンタリー風の演出で、世界中の映画界に影響を与えた「仁義なき戦い」を観ました!
この映画史に残る傑作の感想を、ネタバレ無しで書いていきます!
10点満点中10点
「仁義なき戦い」のあらすじ・キャスト
【あらすじ】
第2次世界大戦直後の広島・呉市。
戦地より復員してきた若者・広能は、親友を刀で切りつけてきた暴漢を拳銃で射殺し、刑務所へと収監される。
そこで出会った土居組の若頭・若杉の脱獄を手伝ったことがきっかけとなり、広能は土井組の友好組織・山守組の組員となった。
しかし、地元の長老・大久保の筋書きにより、市議会選挙をめぐって土居組と山守組は敵対関係になってしまう。
広能と兄弟分という関係から若杉は穏便に片づけようとするも、山守組幹部・神原が裏切って土居組についてしまい、対立は決定的なものとなる。
追い詰められた山守組は、ついに組長の土居の暗殺を画策し始め……
【キャスト・基本情報】
監督: 深作欣二
出演: 菅原文太、梅宮辰夫、金子信雄、田中邦衛、渡瀬恒彦、松方弘樹、伊吹吾郎
上映時間: 99分
ネタバレ無し感想。全編通してひたすら痛そう!
「仁義なき戦い」は「実録物」と呼ばれる、リアリティを追求したヤクザ映画の先駆け的存在です。
それだけあって、抗争シーンが実にリアル……というか、すっげー痛そう!!
最近のヤクザ映画というと、真っ先に思い浮かぶのは北野武監督の「アウトレイジ」シリーズですよね。
「アウトレイジ」はとにかくスタイリッシュさを突き詰めた映像が魅力の作品でしたが、「仁義なき戦い」はその真逆を行きます。
撃たれたり斬られたりした人間が、全然死なない!
ヤクザは戦闘のプロじゃありませんから、急所を狙うなんてことできなんですよね。
闇雲に拳銃ぶっ放したり、長ドスをめちゃくちゃに振り回したり。
なので攻撃された方もなかなか死なずに、血を撒き散らしながらぎゃーぎゃー泣きわめいて、下手すりゃ襲いかかってくる。
つまり、抗争のシーンがいい意味で"かっこ悪い"のですよ。
そこに生々しいリアルさが表れてるんです。
日本映画には「任侠物」という言葉があるように、ヤクザを一種のヒーローとして描いてきた歴史がありました。
「仁義なき戦い」は、ヤクザ同士の戦いをあえてかっこ悪いものとして描いた、画期的な作品だったんですね。
目を背けたくなるような血のりの使い方するんだよね〜!
裏切りや嘘は当たり前。仁義のある者ほど損をする世界
タイトルの「仁義なき戦い」の意味を考えてみましょう。
ヤクザ社会の「仁義」とはいったい何か?
ひとことで言ってしまえば、親兄弟を大事にするという掟のこと。
盃を交わせば、そこには実の家族よりも濃い関係性が生まれる。
それが、無法者だらけのヤクザ社会をまとめるためのルール……のはずなのです。
ところがこの「仁義なき戦い」の登場人物、ぜんぜんその掟を守らない!
平気で親を裏切るわ、親の兄弟分を殺してしまうわ……
親分だって例外ではなく、子分のビジネスに勝手に手を出して私服を肥やす。
……と、まぁとんでもない連中ばかりなんですよね。
一方で、昔ながらの仁義を貫き通そうとするヤクザ(梅宮辰夫とか松方弘樹とか)は、だいたいひどい目にあっていきます。
掟を守るものほど割を食う、まさに「仁義なき戦い」だってわけです。
誰も信用できない人間ドラマもシリーズの持ち味のひとつ!
このくせになる不安定さを楽しんでみてください。
要所でのコメディ演出が見事!
過激なバイオレンス描写が売り物とされる「仁義なき戦い」シリーズですが、意外とコメディ描写もしっかりしてて笑えます!
たとえば、菅原文太演じる広能が指詰めをするシーン。
あそこなんか、完全にドタバタ劇になってますね。
やってることは深刻なはずなのに、なぜか笑えてしまう。
土井組に殴り込みに行く行かないの話し合いをする場面もそう。
田中邦衛のうさんくさい演技がもう最高です。
元々こんなお芝居をする役者さんだったとは知りませんでした!
暴力の中にも笑いを潜ませるストーリーの作り方は、後の北野武映画にも影響を与えたのかな〜なんて思います。
現在も活躍する大物俳優たちの演技合戦が楽しめる、暴力エンタメの傑作でした!