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【後半ネタバレ】「オリエント急行殺人事件」の感想。後からじわじわ好きになるリメイクだった!

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(出典: 映画『オリエント急行殺人事件』予告B - YouTube)

アガサ・クリスティーの傑作ミステリー小説を映画化した「オリエント急行殺人事件」を鑑賞してきました! 

1974年に続き、映画化されるのは今回で2度目。名探偵エルキュール・ポアロをケネス・ブラナーが演じ、また監督も務めます。ジョニー・デップ、ペネロペ・クルスをはじめとする豪華共演陣にも注目です。

あらすじ

イスタンブールからロンドンへ向かう豪華寝台列車・オリエント急行。この車内で突如として殺人事件が発生する。

たまたま乗り合わせていた名探偵エルキュール・ポアロ(ケネス・ブラナー)は捜査に乗り出すが、そこには驚きの真相が待ち受けていた……。

ネタバレ無しの感想……は書けません!

「あらすじ短ッ!!」と思った方、お断りしておきますが「オリエント急行殺人事件」はまじでネタバレ厳禁なお話なので、これくらいしかあらすじ書けないんです。この作品は世界のミステリ史に残る傑作で、そのオチはあまりにも有名。有名すぎてむしろ、オチを知らないのはラッキーだと言えるほどなのですよ。

感想を書くにも、どうしても内容に触れざるを得ないわけで、「ネタバレ無しの感想」はこの映画に関しては書けません!

ということで、ネタバレしたくないという人はここで読むのやめてください。グーグル検索も Twitter 検索もせず、一切の事前情報をシャットアウトしていますぐ劇場にGO!です。あなたのような人が一番この映画を楽しめるのですから。


↓以下、ネタバレありの感想↓


ネタバレありの感想。復讐譚の美化を嫌ったのがリメイクの目的か?

「オリエント急行殺人事件」が映画化されるのは今回で2度目。となると、やっぱり前回との違いを比べてみたくなりますね。

前回の映画化はなんと40年以上前の1974年で、名優アルバート・フィニーがポアロを演じています。

こちらと比べると、2017年版のポアロはかなり人間味が増していたように感じます。

1974年版のポアロは、妙に甲高い声とオーバーな動き、カッと見開いた目などが特徴で、一見して「やべぇヤツ」という印象。ミスタービーンにも見える、かなりエキセントリックな役作りでした。人間離れした、超然とした存在として描かれていましたね。

一方で、2017年版、ケネス・ブラナー演じるポアロはより低い声の落ち着いた話し方になり、動きも控えめ。「老紳士」と言われても違和感ありません。そして、けっこう簡単に悩む。「私はおそらく世界一優秀な探偵だ」とか大きなことを言っておきながら、事件中盤では「手がかりが見つからない……」とひとり苦悩している様子が描かれます。

うーん、この演出はどうでしょ。個人的には、ポアロってひたすら超人的に頭が良くて、それゆえ人間性を犠牲にしてる描き方の方が好みではあります。1974年版のイメージを崩すためなら、しゃべりかたや佇まいを変えるだけじゃだめだったのかな〜。杖の使い方なんかで「動けるポアロ」の印象づけもうまくできてたわけですし。

さらに、ポアロが「人間味」を獲得してしまったことで、もうひとりの重要人物であるブック(トム・ベートマン)の役割が無くなっちゃってるんですよね。

事件の真相はこうでした。


オリエント急行の車内で殺された男、サミュエル・ラチェット(ジョニー・デップ)は、かつてアームストロング大佐という軍人の娘、デイジーを誘拐・殺人した張本人だった。この日、列車に乗り合わせた13人はすべてアームストロング大佐の関係者であり、法の裁きを受けることなく釈放されたラチェットに正義を下すため、13人全員で共謀して彼を殺害したのだった!


1974年版の映画では、この"複雑な仮説"と、「謎の人物がラチェットを殺害して車外に逃走した」という"単純な仮説"のどちらを警察に伝えるかを、ポアロはブックに託します。

というのも、ブックは鑑賞者(あるいは読者)の気持ちを代弁する立場としてこの映画に登場しているからなんです。乗客の尋問のたびに「あいつは怪しい!」「あの人はやってないでしょ」とかいちいち口を挟んでくるところなんか、まさにミステリ読者の目線ですよね。

灰色の脳細胞をもつポアロは、確実に事件の真相を見抜いています。彼に嘘はつけません。しかし、犯行に及ぶに至った背景を考えると、彼らを正直に警察に突き出すのは、いくら人間離れしたポアロであっても胸が痛む。そこで、ポアロは警察への証言を、人間らしい友人であるブックに託したんです。当然読者も「犯人たちは気の毒な人たちなのに、捕まっちゃうのはかわいそうだよ〜」と思ってますから、これで溜飲が下がるというわけ。

が、今回はポアロ自身がこの決断を下してしまってる。しかも「私はこのアンバランスを抱えて生きる」とか言っちゃって、なーんか腑に落ちてない感じがするんですよね。ほんとなら全員警察に突き出したいんじゃないのかな……?

ここにどうやら、リメイクの動機があるんじゃないでしょうか。1974年版の映画は、要するに美化された復讐譚でした。やってることは殺人だけど、それを正当化するに十分な動機があるからオッケーでしょと。作品そのものもハッピーエンドでしたね。

でも2017年版は、そこに容赦なく「お前たちのやったことは殺人だからな」と念押ししてくるわけですよ。警察には言わないでおくが、わたしはこのアンバランスを抱えて生きる、あなたたちの犯したことが100%正義だとは認めない……。これが原作に対する新たな解釈なんでしょう。

いや〜、鑑賞直後は「旧版の方が好みだな」と思ってた僕ですが、記事を書くにつれて「リメイク版の重たい解釈もありだな〜」と感じるようになってきました。観てスッキリする作品ではないけれど、スルメのように後から効いてくる一作ですね。

関連作品

リメイクといえば、三谷幸喜脚本・野村萬斎主演でリメイクされたテレビドラマ版「オリエント急行殺人事件」もかなり面白かったです! 1974年版の映画を下敷きに、昭和初期の日本を舞台に作り直してます。原作にはない"犯行準備編"も見応えあり。


こちらはアガサ・クリスティーの原作小説。 Kindle版がお得です。